Sky RunnerDai Matsumoto

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スカイランニングについて

キナバル山国際クライマソン

キナバル山国際クライマソン(マレーシア)

  スカイランニングとは、標高2000m以上の急峻な山岳を駆けるスポーツのことです(※1)。スピード登山が進化したスポーツであり、日本ではおよそ100年前から「登山競走」といわれてきました。フィールドの多くはテクニカルな岩場であり、時には雪上や氷河の上もコースとなります。標高2000m未満であっても、森林限界を超えた場所でのスピード登山はスカイランニングといってもいいでしょう(※2)。

  世界的にみて、スカイランニングの競技人口や大会数は欧州を中心に急速に拡大しています。イタリアにはISF(国際スカイランニング連盟)の本部があり、2015年現在、40の国や地域に加盟組織があります(※3)。 ISFによって、2003年より世界各国でスカイランナー・ワールド・シリーズ(SWS)が開催されています。その他にも、2年に1度の世界選手権を頂点に、世界6大陸での大陸別選手権や各国での国内シリーズ戦が開催されています。

  日本では2006年の「OSJおんたけスカイレース」の開催によって、「スカイランニング」や「スカイランナー」といった言葉が認知され始めました。登山ブームやトレイルランニングブームもあって、標高2000m以上の山岳を駆ける登山者は増加しています。2013年には、スカイランニングの安全・健全な普及を目的として、JSA(日本スカイラニング協会)が組織され、日本で初めてISFへの加盟を達成しました。2014年からはスカイランナー・ジャパン・シリーズ(SJS)が開催され、日本国内でも愛好者やアスリートが増加しています。

ISF(国際スカイランニング連盟)ホームページ

JSA(日本スカイラニング協会)ホームページ

※1
ISF(国際スカイランニング連盟)の定義では、「スカイランニングとは、標高2000m以上の山岳でのランニングである。ルートは、登攀グレードⅡ級(易しい:三点支持を要する)を超えず、40%未満の斜度に限る。ストックや手の使用は必要に応じて可能。」とされる。
※2
ISFのルールでは、標高2000mに届かない場合でも標高差が1300m以上あればスカイレースとして認めている。
※3
2015年現在、アジアでは日本の他に、中国・香港・マレーシア・フィリピン・スリランカに加盟組織がある。

スカイランニングの魅力とは

スカイランニングが広げる登山とランニングの世界

ランタン谷の尾根

ランタン谷の尾根を登る(ネパール)

  スカイランニングの舞台は標高2000m以上の高地です。ランニングをしている人たちにとっては“過酷な場所”というイメージがあるかもしれませんが、登山者にとっては“景観が美しい場所”だといえます。“景観が美しい場所に誰よりも手っ取り早く行けること”が、スカイランニングの大きな魅力だといえるでしょう。

  スカイランニングといっても、心臓と肺をフル稼働させながら登山道を走り続けているわけではありません。それぞれの体力に応じて走れるところだけを走ればいいのです。時にはゆっくり歩きながら、自分が辿ってきたルートを振り返り、雄大な景色に胸を打たれます。時には立ち止まって、可憐な高山植物に心を和ませます。山頂では、同じ山を登った者同士の会話が弾みます。山を楽しむという点では、一般的な登山者となんら変わりありません。

  ただ違う点は、進むスピードが断然速いということです。普通の登山では数日かかるような行程でも、スカイランニングであれば日帰りすることが可能です。例えば、上高地から槍ヶ岳・穂高連峰を登ってその日のうちに上高地に戻ってくるという“異次元の登山”をすることができるのです。また、スピードが速いということは、高地特有の急な天候の変化にも迅速に対処することができるというメリットがあります。遠くで雷鳴が聞こえたら、走ることでより安全な場所まで逃げることができます。山を走るのは危ないというイメージがあるかもしれませんが、逆にリスク回避の手段になるといえるでしょう。

  スカイランニングの舞台は、里山の何倍も大きな山である場合が多いです。その多くは急峻な岩場やガレ場でしょう。登山経験の浅いランナーは初めのうちは、急な登り坂には苦しさを、テクニカルな下り坂には恐怖心を覚えるでしょう。しかし、スカイランニングに慣れてくれば、アスレチックに挑むワクワク感やジェットコースターに乗った時のようなスリル感を何十分も何時間も楽しむことができます。これほど長大なアップダウンは里山の低山では体験することができません。さらに、スカイランニングで鍛えたバランス感覚によって、どのようなフィールドでも快適に走ることのできる能力を獲得することができます。“アクロバティックなランニング”ができるようになることで、ランニングを楽しむ幅が大きく広がるといえます。

高山植物の女王コマクサ

高山植物の女王コマクサ(長野県の硫黄岳)

  スカイランニングによって、新しい登山の世界、新しいランニングの世界が見つかるでしょう。雄大な景色に溶け込み透明な風になったような爽快感を、多くの人に体感してほしいと思います。

日本で体験できるスカイランニング

剱岳をバックに走る

剱岳をバックに走る(富山県の大日岳)

  東西・南北に細長い日本列島ですが、スカイランニングの舞台となる2000mを超える高所や森林限界は、西日本には少なく、東日本に偏っています。とりわけ日本アルプスがそびえる中部地方はスカイランニングのメッカといえるでしょう。日本アルプスには急峻な山岳が多いですが、北アルプスの表銀座のように、走るのに適した緩やかな稜線も少なくありません。東北地方や北海道では、森林限界が低くなるため、標高2000m未満の山岳でもスカイランニングの雰囲気を楽しめる場所が多いです。

  大会数は少ないですが、日本にもスカイランニングを体験できるトレイルランニングレースが開催されています。その代表的なものを以下で紹介します。

大会名場所最高標高距離
富士登山競走山梨県・富士山3711m21km(登りのみ)
富士登山駅伝競走大会静岡県・富士山3710m47km(駅伝形式)
OSJおんたけスカイレース長野県・御嶽山3067m37km
立山登山マラニック富山県・立山3003m65km(登りのみ)
スリーピークス八ヶ岳トレイル山梨県・三ツ頭山2500m38km
浅間スカイマラソン群馬県・篭ノ登山2227m115km・60km
上州武尊スカイビュートレイル群馬県・上州武尊山2158m50km
菅平スカイライントレイルランレース長野県・根子岳2207m40km・20km
美ヶ原トレイルラン&ウォーク長野県・茶臼山2006m80km

※開催時期は変更する場合があるので掲載しませんでした。